05 花街円山町を今に伝える「芸者階段」


神泉谷は、西支部亜台地にいくつも入り込んで入る谷戸のひとつです。そのため、円山町にはたくさんの坂があり、下駄をつっかけた芸者さんが歩きやすいよう、蹴上が浅く踏面が広く造られた独特な形状の「芸者階段/花街階段」が数多くありました。今では、そのごく一部が残され、花街時代のまちの様子を伝える貴重な史跡となっています。

明治初期に円山に花街が生まれ、大正期にはこの辺り一帯は「三業地」と呼ばれていました。三業とは「料理屋」「待茶屋」「芸者置屋」の3つの総称。当時の円山町は、こうした三業を中心とした華やかな文化を育み、人々が酒を片手に癒しと賑わいを求める花街として栄えていました。

芸者階段の「登り口」にはかつて、下駄屋の「金丸屋」がありました。その店を親子二代で営んでいた河野豊さんは「自分がつくった下駄をつっかけた芸者さんたちが、円山の町内を粋に、リズミカルに歩いていたことをはっきりと覚えている」といいます。

河野さん親子のつくる下駄は、奇麗に着飾った芸者の足元の美しさを、目立ちすぎず、そこはかとなく際立たせていたことでしょう。この階段に響くいろいろな足音は、まちの歴史と今を語ってくれます。

しかし今、円山町でこの階段を踏む芸者さんは、たったの4人しかいません。現役の芸者を務める小糸姐さんも、その1人。時代の流れのなかで花街文化が失われる現状を憂えるだけでは始まらない「出来る事はなんでもやる」、そう小糸さんは話します。


ガイド目次

01 神泉駅
02 カフェ・ド・ラ・フォンテーヌ
03 弘法湯石碑
04 金井青果
05 芸者階段
06 藤むら
07 裏渋谷通り
08 道玄坂地蔵
09 二つの料亭
10 ホテル街
11 国際的クラブWOMB
12 複合型ライブハウスShibuya O−Group
13 ミニシアター「ユーロスペース」
14 円山児童遊園地
15 国際文化理容美容専門学校
16 まちの元お米屋さん「円神米店」


「音で辿る円山町」は、青山学院大学総合文化政策学部鳥越研究室が2017年に企画編集した円山町を歩くためのガイドブックの内容を「音で辿る」ためのページです。「音」は徐々に増えていく予定ですのでお楽しみに!

まちミュージアムガイドブック東京都渋谷区神泉編
「渋谷の元」をさがして 古くて新しい神泉円山町を 歩くためのガイドブック
編集・執筆・イラスト:青山学院大学総合文化政策学部鳥越研究室
制作協力:つなぐNPO、渋谷区郷土写真保存会
発行:ACL青山コミュニティラボ(東京都渋谷区神宮前5-47-11青山学院アスタジオ2階)